創業計画書「創業の動機」の審査に通る書き方を銀行員が解説します。

「創業の動機」は、創業計画書の中でも特に重要な部分であり、日本政策金融公庫の融資審査でも重視します。とはいえどのように書けばいいのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、銀行員が実際に審査で重視するポイントを踏まえ「創業の動機」の書き方を徹底解説します。

著者:加藤隆二 
金融ライター。勤続約30年になる現役銀行員。主に融資担当者として不動産関連の業務を担当。年齢を重ねてからは融資窓口で、住宅ローンだけでなく、無担保融資、事業資金融資、不動産投資など、さまざまな融資を担当。銀行員目線で記事を書いています。

創業計画書と「創業の動機」の重要性

創業の動機について解説

まず創業計画書とはなにか、そして創業の動機について解説するところから始めたいと思います。

創業計画書とは?

創業計画書は事業を開始するために、事業の目的や内容、そして資金計画などをまとめたものです。

日本政策金融公庫の創業融資では必須の書類で、呼び名は多少異なりますが銀行融資でも重視されます。

創業の動機とは

創業の動機とは、言ってみれば「なぜ創業したいのか?」というそもそもの理由・根拠になります。事業を通じて自分は何を達成したいのかといったビジョン、そしてその根本的な理由から、創業者の熱意や覚悟を示す部分でもあり、計画書の中でも特に重要な要素となるのです。

そのため審査に通るためには、以下のポイントが盛り込まれていると理想です。

創業の動機でおさえたいポイント

5W1Hで創業の動機を明確にできます

5W1Hで創業の動機を完成させる

創業の動機は考えると言うよりも、自問自答して答えを探る方がイメージを掴みやすいものです。基本的に創業の動機は5W1Hで考えてみましょう。つまりWhen(いつ)Where(どこで)Who(誰が)What(何を)Why(なぜ)How(どのようにして)に当てはめるのです。

①「なぜ今なの?」〜Why(なぜ)When(いつ)・なぜ今、このタイミングで起業するのか?

これはなぜ創業したいのか、どうして創業が必要なのか、そしてそれがなぜ今なのか、先延ばしはできないのはなぜか?など「時間」を重視して動機をまとめるものです。

②「何を解決したいの?」〜What(何を)・どのような社会問題を解決したいのか?

こちらは、自分が解決したい問題を示し、その解決のために創業するという論法です。

思いつきや自己の利益だけでなく、社会貢献など公共性や必然性を持たせるとベターです。

③「どうやるの?」〜How(どのようにして)What(何を)・どのような価値を顧客に提供したいのか?

こちらはもう一歩具体的に踏み込んだ表現で、どういった価値を顧客に提供したいのか?という命題に基づくものです。

④「誰に勝ちたいの?」〜Who(誰を)What(何を)・競合は?その違いは何か?自社の強みはどこにあるのか?

こちらは創業のきっかけよりも、同業者間の競合に勝ち残りたいという部分を創業動機としてクローズアップするものです。ここでのポイントは、他者を蹴落とすような(本来はそのとおりなのでしょうが)ネガティブな表現は使わずに、他社ではなく自社にしかできないと言い換えると良いでしょう。

⑤「覚悟はできているの?」〜What(何を)How(どのようにして)・どのような事業を成功させたいのか?

最後は、ずばり自分の思い描くゴール・目標を事業の成功とするもので、最もオーソドックスな動機になります。

ここで説明した5つのポイントは、創業の動機を考えるうえで欠かせないものなので、これらを繋げれば、創業の動機はほとんど完成します。

【解説】審査する立場から〜創業の動機は創業計画書への導入部

「銀行員からアドバイス」「創業の動機」

ここまで例であげたように、創業の動機を語ることは、同時にそれを落とし込んだ創業計画書への導入部(イントロ・紹介文)とも言えます。したがってこの部分がしっかりと固まっていれば、その後の計画書にも迫力が備わってくるのです。

筆者である私は銀行員として、創業計画書や事業計画書を数え切れないほど読んできました。創業の動機部分は審査する立場では気になりますし、その後の計画を読んでいくときにも、基本的なイメージとして頭に残りつづけたものです。

このように動機に説得力や迫力のある創業計画書は内容もしっかりして、こちらにぐいぐいとアピールをしてきます。逆に動機が弱かったり観念的過ぎるものだったりすると、計画全体もふわふわと軽佻浮薄に感じてしまった経験があります。

【業種別】具体的な動機の例文集

創業の動機の具体例

続いて創業の動機の具体例を、業種別にいくつか紹介します。

飲食業

ケース:地元野菜を使ったレストランで創業融資を受けたいと考えている場合

(例)

「近年における健康志向の高まりとともに、食の安全・安心に対する関心も同じように高まっています。そのため地域の人々のあいだでは、地元の食材を使った料理を求める傾向が強まっており、そこから地域食材を活用したレストランへのニーズも高まりつつあると感じています。

以前から地元野菜の美味しさと栄養価の高さに着目してきた私は、いまこそ地元野菜の良さを最大限に引き出すレストランを創業するべきと考え、創業を決意したのです。」

ホームページ制作会社

ケース:勤務先から独立してホームページ制作会社を創業する融資を受けたいと考えている場合

(例)

「近年、企業の公式サイトは情報発信だけでなく、顧客とのコミュニケーションやブランドイメージをアピールする場としても重要な役割を果たしています。しかしそのいっぽうで、中小企業などはWebサイトの重要性は理解していながらも、知識や予算面からサイト構築ができないという現状もあります。

そこで私は、自分の培ってきた経験やスキルを用いて、安価でありながらも効果のあるWebサイト構築を通じ、地元企業を支援したいという強い思いから創業することを決意しました。」

創業の動機は業種によっても書き方のポイントがある

創業の動機 書き方のポイント

創業の動機は業種によって書き方は変わってきます。特に以下の業者ではコツというか、もうひと工夫が必要になります。

【美容室】

美容室の創業の動機の書き方

(なぜ工夫が必要なのか?)

美容室は競合が多いのに反して差別化が難しい業種です。そのため創業の動機は単に美容が好きだからでは力不足で、どのような客層にどのようなサービスを提供していくのかなどを具体的に示す必要があります。

(創業動機の例文)

「私はこれまで、丁寧なカウンセリングと施術を大切にする美容室を作りたいと考えてきましたます。そこでお客様としっかり向き合い、ライフスタイルや好みに合わせたスタイルを提案できる、温かい雰囲気のサロンを作りたいと創業を決意しました。」

【飲食店】

飲食店の創業の動機の書き方

(なぜ工夫が必要なのか?)

飲食店はフランチャイズなどに代表されるように、新規で参入する障壁が低い分、競争も激しい業種です。そのため創業の動機は、どのような客層をターゲットにし、どのようなコンセプトの店を作りたいのかなどの狙いをを明確にしなければいけません。

(創業動機の例文)

「私は修行先のレストランでの経験から、食材の旬や組み合わせの大切さを学びました。その経験を生かし、感動と笑顔を届けられる、温かいお店を作りたいと創業を決意したのです。」

【Web事業】

web事業の創業の動機の書き方

(なぜ工夫が必要なのか?)

Web事業は目まぐるしいほど技術革新が早い業界です。そのため創業の動機では、時代を掴む、あるいは先取りしたサービスの提供から社会貢献をしたいのか、という論法にすすめるのが良いでしょう。

(創業動機の例文)

「当社はWeb技術の力で、人々の生活を豊かにしたいと考えています。しかし多くの企業がWebサイトを十分に活用できていない現状を見て、Webコンサルティングを通して、企業の課題解決をサポートし、より良い社会の実現に貢献したいと考えるようになりました。」

【整骨院】

整骨院の創業の動機の書き方

(なぜ工夫が必要なのか?)

整骨院は地元住民をターゲットにした地域密着型ビジネスであり、患者との信頼関係が重要です。そのため、創業の動機では、患者に対してどのような施術・治療を提供して地域貢献をしたいのか、と言うのが創業動機としてアピールできます。

(創業動機の例文)

「これまで整骨院で勤務しながら、地域の健康をサポートしたいという思いが強くなり、私はこのたび整骨院を開業したいと考えました。患者の症状や悩みに寄り添い、地域のみなさんが安心して通える整骨院を作りたいと考えています。」

【介護施設】

介護施設の創業の動機の書き方

(なぜ工夫が必要なのか?)

介護施設は、高齢化社会の進行拡大で、これからも需要が高まる業種ですし、競争激化も予想されます。そのため創業の動機は、どのような高齢者をターゲットにして、どのような介護サービスを提供するのか?といった説明と競合他社との差別化をアピールできる創業の動機になっているのか、が重要です。

(創業動機の例文)

「長年介護業界に身をおいてきた私は、高齢者が安心して暮らせるような、温かい雰囲気の介護施設を作りたいと考えてきました。また将来的には高齢者が安心して暮らせるように、地域包括ケアシステムの中核となる施設を目指します。」

【不動産業者】

不動産業の創業の動機の書き方

(なぜ工夫が必要なのか?)

不動産業者は、一生のうちそう何度もない不動産の取引に携わる仕事で、いわば顧客の人生に関わる大きな買い物や投資をサポートする業種です。そのため、創業の動機では、どのような顧客をターゲットにし、物件の取り扱いによってどのような価値を提供したいのか、というのが創業動機として適しています。

(創業動機の例文)

「お客様の夢を実現するサポートしたいという思いから、私はこれまで不動産会社で経験を積んできました。これまでの経験から、お客様のニーズに合った物件を見つけることの難しさを実感している私は、それゆえにお客様と共に考え最適な物件を提案する、信頼できる不動産業者になりたいと考え創業をきめたのです。」

ポイント:税理士の視点

税理士視点のポイント

美容室、飲食店、Web事業、整骨院、介護施設、不動産など、創業の動機はそれぞれの業種によっても書き方のポイントがあります。

例えば、美容師、整体師などは技術が大事です。それまでのキャリアが全く異業種なのに、いきなり「明日から美容師になる」と言っても説得力がないし、うまくいくビジョンも見えません。そのような中で動機を練り上げても融資しよう、とはならないです。

飲食店開業についても、必ずしも飲食事業の経験が必要なわけではありませんが、何の関連もないお仕事から「ラーメンが好きだからラーメン屋になる」と創業動機に書かれても、頑張って、としか言えません。

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創業計画書に創業の動機を落とし込むための3つのポイント

創業計画書に創業の動機を落とし込むためのポイント

続いて、ここまでの説明を踏まえ創業計画書に創業の動機をどのように落とし込むかというポイントを3つ解説します。

ポイント1.具体的に、現実的に

抽象的な表現や綺麗ごとを並べず、具体的なエピソードやデータを用いて説明しましょう。したがってウソや誇張をしないのはもちろん、すべて事実に基づいた内容を記述することが重要です。また他者のアイデアを流用したり、ネットなどで拾い集めたフレーズをつなぎ合わせたりなどはせず、自分の視点や経験に基づいた動機を示すことが大事です。

ポイント2.公共性、公益性をもたせる

創業の動機を企業の私的な出来事で終わらせず、課題解決や社会貢献といった意識を乗せることで、創業の動機に公共性・公益性を持たせるようにしましょう。もちろん実際には起業すること自体が目的であったとしても、それが社会的ニーズに応えるものであるかのように表現することで、審査担当者の共感も得やすくなります。ただし、過度な表現は逆効果になる可能性もあるため、力加減には注意も必要です。

ポイント3.最後はやる気と熱意

いくつか注意点やポイントを解説してきましたが、やはり基本的には経営者としての覚悟や責任感を示すことで、事業への真剣さを伝えることができます。つまり最後はやる気と熱意で、これらを言葉で表現し、その中から自社の独自性や差別化などのポイントを強調すれば良いのです。ただしここでもあまり独りよがりな内容になってしまわないように、客観的な視点を取り入れることを忘れないようにしてください。

まとめ

今回は創業計画書と創業の動機について、日本政策金融公庫や銀行融資の審査に通過するという課題をもとに解説してきました。創業計画書や創業の動機はもちろん自分で考えることが重要なのですが、自分のビジョンや熱意がしっかりと伝わらなくては意味がありません。そこで税理士などの頼れるプロの力を借りることも有効な策の1つです。

自分の言葉で自分の創業動機を伝えることは大事ですが、その気持ちがしっかりと伝わるサポートをしてくれるような、頼れるプロと一緒に考えることを私は銀行員としておすすめします。

また、動機だけでなく、そのほかの情報を矛盾点なく信頼度が高い創業計画書を作ることも大切です。グローブ税理士事務所ではMBAを保持する税理士が創業計画書や面談など、創業融資に関わる作業を徹底サポートいたします。ぜひお気軽にお問合せください。

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