日本政策金融公庫の創業融資と保証協会付き融資の違いを徹底解説
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業資金)と、信用保証協会付き制度融資はどちらも公的な融資制度として多くの事業者に利用されています。
しかし、公庫の創業融資と信用保証協会付きの融資には審査基準や融資金額などに違いがあります。
今回は、日本政策金融公庫の創業融資、信用保証協会付き制度融資それぞれのメリット、デメリット、6つの違いについて詳しく解説いたします。
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業資金)とは?
政府系金融機関である日本政策金融公庫(JFC)が提供する新規開業資金は、これから事業を立ち上げる人から開業してからまだ経歴が浅い事業者(おおむね7年以内)までを対象にした融資制度です。
以前までは、日本政策金融公庫の創業融資と言えば「新創業融資制度」が有名でしたが、2024年3月31日を持って廃止されてしまいました。
2024年4月からは、日本政策金融公庫で創業融資を利用したい場合は「新規開業資金」を利用することになります。
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業資金)のメリット
日本政策金融公庫の創業融資である新規開業資金のメリットを4つご紹介していきます。
無担保・無保証人での利用が可能
これから事業を始める、あるいは事業開始後税務申告が2期以内の場合は担保や保証人を用意する必要がありません。 事業立ち上げのタイミングだと担保や保証人をつけるのが難しいという人も少なくないですが、公庫の創業融資ではどちらも不要なので負担を抑えながら資金調達ができます。
低金利での融資
これから事業を始める、あるいは事業開始後税務申告が2期以内の場合は標準金利から一律で0.65%引き下げられます。返済時の利息負担も軽減されます。
自己資金要件の廃止
従来は新規開業資金を利用するためには、融資総額の1/10の自己資金がないと申し込めませんでしたが、2024年4月の改訂後は自己資金要件は廃止されました。 もちろん自己資金はあるに越したことはありませんが、それ以上に創業計画の内容が重視されています。
返済期間が長期設定
新創業融資の廃止により新規開業資金が改訂され、2024年4月から返済期間が延長しました。
設備資金は20年以内(据置期間5年以内)、運転資金で10年以内(据置期間5年以内)に変更となりました。余裕を持って資金繰りができると事業者から高く評価されています。
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業資金)のデメリット
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業資金)には、たくさんのメリットがある一方で利用する前に知っておきたいデメリットもいくつか存在しています。
融資実行までの時間が長い
日本政策金融公庫は審査や手続きが民間金融機関よりも時間がかかる傾向にあります。
利用する制度や申請時期によっても審査期間は異なりますが、民間の金融機関は申込から審査完了までは大体1~2週間ほど。対して日本政策金融公庫は3~4週間ほどの期間がかかります。
借り換えはできない
借入金をまとめるために、複数の金融機関から融資を受けて借り換えをするという方法もありますが、日本政策金融公庫は借り換えに対応していません。
日本政策金融公庫からの融資を借り換えに使用した場合は、残債の一括返済を求められます。
融資限度額が制約される
事業規模や自己資金の比率によって融資額が制限され、大規模な資金調達には適さない場合があります。融資限度額は最大で7,200万円ですが、実際に創業融資を利用した人の平均額は約800万円ほどです。
審査の基準が厳しい
事業計画や自己資金の用意、経験や実績が審査基準となります。書類が不十分だったり、面談での受け答えがきちんとできない場合は融資を受けられない可能性が高いです。
信用保証協会付の制度融資とは?
信用保証協会付の制度融資とは、金融機関が融資する際、信用保証協会が保証人の変わりとなって融資を受けやすくする制度のことです。
信用保証協会とは信用保証協会法に基づく公的機関で、各自治体に存在しています。
信用保証協会付の制度融資は主に中小企業や個人事業主の資金調達を支援を目的とし、開業を目指す人や開業直後で運転資金を確保したい方などに広く利用されています。
事業者が金融機関と保証協会に申し込みを行い、審査を経て融資が実行されます。保証料の支払いがありますが、その分金融機関にとってのリスクが軽減されるため、事業者にとっては融資が受けやすい点が特徴です。保証料は融資額や期間によって変動します。
信用保証協会の制度融資は創業時だけでなく、事業拡大や運転資金の補填など、多様な資金ニーズに対応できる融資制度として多くの事業主の方が活用しています。
信用保証協会付の制度融資のメリット
信用保証協会付の制度融資のメリットを4つご紹介します。
融資の審査が通りやすい
保証協会が金融機関のリスクを分担するため、民間の金融機関(銀行など)と比べると比較的審査が通りやすい傾向にあるようです。
地方自治体の助成制度が活用できる
自治体で保証料の一部が助成される場合があり、役所窓口等から申請することで支払い負担が軽減されるケースも多くあります。(助成制度については自治体によって内容が異なるので、事前にご確認ください。)
資金用途が幅広い
信用保証協会付き制度融資は創業資金だけでなく、運転資金や設備資金としても利用可能で、事業の成長段階に合わせた融資を受けられます。
融資枠の拡大が図れる
プロパー融資(民間の金融期間から受ける融資)と信用保証付制度融資を併用すると、実質的に融資額の拡大が可能です。
信用保証協会付の制度融資のデメリット
一方で、以下の信用保証協会の制度融資のポイントがデメリットと感じる方も少なくないようです。
保証料が発生する
融資額や期間に応じて保証料が必要となります。ただし、一部の自治体や窓口では保証料の補助を行っている場合もあるため、事前に確認することが重要です。
融資の手続きが複雑
金融機関と保証協会の双方に申し込みを行うため、手続きや審査手順が煩雑になり、申込から融資実行まで時間がかかります。
返済能力の確認が厳しい
保証協会と金融機関の両方で審査が行われるため、返済能力や事業計画が不十分だと融資が実行されない場合があります。
代位弁済時は残債が一括請求される
もしも返済が滞って信用保証協会が代位弁済した場合、信用保証協会から残債の一括返済が請求されます。
融資額の上限がある
制度融資では、企業の規模や信用力に応じて融資可能な金額が設定されており、その範囲内でしか資金を調達できない場合があります。また、保証協会の引き受け限度額に達している場合、希望通りの金額を借りられない可能性もあります。
日本政策金融公庫の創業融資と信用保証協会付き制度融資6つの違い
日本政策金融公庫の新規開業資金と信用保証協会付き制度融資は、創業資金を調達するため多くの事業者が利用していますが、それぞれ特徴や利用条件が異なります。
こちらでは日本政策金融公庫の新規開業資金と、信用保証協会付き制度融資の6つの違いをご紹介します。
審査時に重視するポイント
日本政策金融公庫では、融資希望額に対して2~3割程度の自己資金を持つことが理想とされます。また、代表者の経歴やスキル、創業計画書の具体性が審査通過の重要なポイントです。
一方で、信用保証協会付き制度融資は資金使途と借入希望額のバランス、返済能力に重点を置いており、事業計画書の完成度が高いほど評価される傾向にあります。
融資金額
日本政策金融公庫 | 信用保証協会 | |
融資金額 | 最大7,200万円(運転資金4,800万円) | 最大3,500万円(自己資金+2,000万円) |
日本政策金融公庫の新規開業資金では、最大7,200万円(うち運転資金は4,800万円)の融資が可能です。
一方、信用保証協会付き制度融資は3,500万円までの融資が可能です。
ただし、融資額は自己資金に2,000万円をプラスにした金額の範囲内と定められているので、上限いっぱいまで借りたいのなら1,500万円の自己資金が必要となります。
参照するデータ
日本政策金融公庫 | 信用保証協会 | |
参照データ | ・CIC(指定信用情報機関) ・日本政策金融公庫の過去データ | 信用保証協会の過去データ |
日本政策金融公庫では、融資の審査の際に信用情報機関CICのデータや公庫内の過去の融資履歴を参照して信用情報に問題がないか確認します。
信用保証協会は過去の保証協会付き融資の返済履歴を中心に審査を行い、CICの情報は参照しません。(ただ、窓口となる金融機関はCICを参照することも多いので、必ず審査が通るとは断言できません。)
返済期間・据置期間
日本政策金融公庫 | 信用保証協会 ※ | |
返済期間・据置期間 | 設備資金:20年以内(据置期間5年以内) 運転資金:10年以内(据置期間5年以内) | 設備資金:10年以内(据置期間1年以内) 運転資金:7年以内(据置期間1年以内) |
※・・・信用保証協会の据置期間は、利用する融資制度や自治体によって異なる可能性があります。
日本政策金融公庫の返済期間は、設備資金が最長20年、運転資金が最長10年となっており、据置期間も最大5年と長めに設定されています。
信用保証協会付き制度融資の返済期間は設備資金が最長10年、運転資金が最長7年、据置期間は最大1年です。
公庫の方が余裕を持った返済計画を立てやすく、創業間もない事業者にとっては計画が立てやすいと言えるでしょう。
保証金・保証人
日本政策金融公庫 | 信用保証協会 | |
保証金・保証人 | 事業開始前、あるいは事業開始後税務申告2期以内であれば無担保・無保証認 | 借入の際に保証料が発生 |
日本政策金融公庫の創業融資では、個人であっても法人であっても開業前、あるいは開業間もなければ無保証で融資が利用できます。
信用保証協会付き制度融資は法人の場合代表者が連帯保証人になることが多く、保証料も発生します。
保証料は融資金額・保証料率・保証期間・分割係数などで算出されます。保証料は割引や分割支払いも利用できます。
東京都信用保証協会で利用できる保証料の割引として、以下のようなものがあります。
- 有担保割引(担保提供により0.1%割引される場合がある
- 会計参与を設置している旨の登記を行ったことが分かる書類、または公認会計士または監査法人の監査を受けたことが分かる監査報告書の写し
割引を適用しない場合は、分割払いも可能です。
申込窓口
日本政策金融公庫 | 信用保証協会 | |
申請窓口 | ・オンライン ・公庫の各支店窓口 ・郵送 | ・信用保証協会窓口 ・市区町村の役所窓口 ・金融機関の窓口 ・商工会議所等の窓口 |
日本政策金融公庫では各支店窓口のほか、オンラインや郵送での申請が可能です。
信用保証協会付き制度融資ではオンライン申請に対応しておらず、信用保証協会や役所、金融機関の窓口から申込を行います。
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創業時によく利用される日本政策金融公庫の新規開業資金と、信用保証協会付き制度融資について解説いたしました。
どちらも公的な機関のため混同されることもありますが、融資条件や返済期間、保証人・保証金の有無など異なる点も多数あります。
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