創業融資で1000万円を借りるための条件やポイントを銀行員が徹底解説します
「1,000万円の融資を受けるにはどうしたらいいのか?」
いきなり具体的な金額が出てきましたが、創業に必要な資金として1,000万円は多すぎでも少なすぎでもないリアルな金額だと銀行員の私は思います。そして具体的に1,000万円を借りる方法として考えられるのは、日本政策金融公庫の融資です。そこでこの記事では「創業融資で1,000万円を借りる」という視点から日本政策金融公庫の創業融資について、事業資金融資を審査する銀行員が現場から解説します。なお記事では日本政策金融公庫の創業融資に焦点を当ててはいますが、ほとんどの部分は他の日本政策金融公庫融資や銀行の事業資金融資にも共通します。これから創業をしたいと考えている人や、創業してスタートを切ったばかりの人は参考にしてください。
著者:加藤隆二
金融ライター。勤続約30年になる現役銀行員。主に融資担当者として不動産関連の業務を担当。年齢を重ねてからは融資窓口で、住宅ローンだけでなく、無担保融資、事業資金融資、不動産投資など、さまざまな融資を担当。銀行員目線で記事を書いています。
1,000万円の創業資金を借りる方法は?

日本政策金融公庫の創業融資以外にも、1,000万円の創業資金を借りる方法はないのでしょうか?
まずはここから考えてみます。
クラウドファンディング、エンジェル投資家
最近になって知られるようになった方法として、エンジェル投資家からの融資(正確には投資)やクラウドファンディングなどがあります。これらは融資というより出資に類するものですが、創業に必要な資金を調達する手段として認知度も上がってきました。とはいえエンジェル投資家からの出資やクラウドファンディングは登場してからまだ日も浅く、また利用できる人も一握りなのが実態で現実的に誰でも利用できる方法ではありません。
【参考①】
独立行政法人中小企業基盤整備機構/経営課題を解決する羅針盤J-Net21/ビジネスQ&A クラウドファンディングについて教えてください
クラウドファンディングについて教えてください。 | ビジネスQ&A
銀行や信金の事業資金融資

銀行や信金など金融機関の事業資金融資で創業資金を借りるのも主要な方法で、日本政策金融公庫と並行して利用したり、日本政策金融公庫よりも金融機関融資を選択する企業もあります。
しかし融資審査の難易度などは、相対的に金融機関のほうがきびしめです。これは日本政策金融公庫が公的なのに対し、金融機関は民間の営利企業である点の違いで仕方ない部分ではあります。
【参考②】
独立行政法人中小企業基盤整備機構/経営課題を解決する羅針盤J-Net21/起業マニュアル/金融機関の選び方
金融機関の選び方 | 起業マニュアル | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
日本政策金融公庫の創業融資

冒頭にも申し上げた通り、創業融資で1,000万円を借りる方法として具体的で実現性もあるのが日本政策金融公庫の創業融資です。
そこで日本政策金融公庫の創業融資を詳しく解説し、その後に続く項でもこちらを中心に話を進めたいと思います。
1,000万円の創業融資なら日本政策金融公庫の創業融資

「1,000万円の創業融資なら日本政策金融公庫の創業融資」ということで、詳しく説明していきます。
日本政策金融公庫の創業融資を詳しく解説
日本政策金融公庫の創業融資の概要は主に以下のとおりです。
<日本政策金融公庫の創業融資>
- 融資制度名:新規開業資金
- 対象者:新たに事業を始める個人・法人、または事業開始からおおむね7年以内の個人・法人
- 資金使途:新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要な運転資金・設備資金
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで)
- 返済期間:運転資金・10年以内(うち据置5年以内)、設備資金・20年以内(うち据置5年以内)
- 融資利率:対象者により異なり、「女子、若者、シニア」などは金利優遇される場合もある
- 例)税務申告を2期終えていない場合は年2.90〜3.90%など
- 担保/保証人:申込者の希望を聞いたうえで、審査により決定される
これが日本政策金融公庫の創業融資「新規開業資金」の内容ですが、ここでポイントが2つあります。
それは「自己資金について明記されていない」こと、そして「事業計画が重要となる」ことです。
【参考③】
(概略)日本政策金融公庫/新規開業資金
(融資利率)日本政策金融公庫/金利情報
借りられるのは3倍まで?条件改善後の動向

日本政策金融公庫公庫の創業融資制度は現在、自己資金についての条件は明記されていません。【参考④】(令和6年に融資制度が変わりましたが、それ以前には自己資金が必要と記載されていました)この点は公式ページの質問コーナーでも同様です。さらに筆者が日本政策金融公庫へ電話で聞いたところ「自己資金の条件は無い。全ては事業計画などの審査による」とのことでした。
しかしながら創業を資金面でサポートする頼れるプロである、税理士などの見解では自己資金の2倍程度が融資の上限と言うのが実態のようで、この点は銀行員としての経験上でも同感に思います。
また創業に関する別の公庫開示資料によると、2024年に創業したうち平均自己資金が293万円で、いっぽう平均借入額は780万円なので、平均でみると自己資金の2.6倍となり、実態はこの辺りであることがわかります。【参考⑤】
以上のように、自己資金については上限が明記されなくなっていても、やはり一定の準備が必要な点は変わりません。そして自己資金条件が表面的には撤廃されたことで、これまで以上に事業計画の重要度が増しているとも言えるのです。
※新創業融資制度は、令和6年3月31日をもってお取扱いを終了しました。
令和6年4月1日からは、新創業融資制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度をご利用いただけます。
【参考④】
【参考⑤】
1,000万円を借りるには事業計画が必須です

自己資金の項でも触れましたが、1,000万円を借りるには事業計画が必要で、かつその重要性が増しているのが実態です。
例えば日本政策金融公庫の創業融資「新規開業資金」の制度では事業計画について注釈があります。
「新規開業資金」
ご利用いただける方:新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方(注1)
(注1)「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限ります。
なお、創業計画書のご提出等をいただき、事業計画の内容を確認させていただきます。
【参考】
日本政策金融公庫/新規開業資金
創業融資で1,000万円借りるために欠かせない事業計画はプロの力を借りて〜まとめ

創業融資で1,000万円を借りるには事業計画が必要で、その重要度がわかったところで、ではどうやって事業計画を作れば良いのでしょうか?
もちろん自分の事業なのですから自分で作ることが理想です。しかし事業経営に注力するあまり計画作成の時間が捻出できなかったり、熱意や計画はあるのだけれど事業計画へ上手にアウトプットできなかったりといったように、事業資金を作るにはいくつかのハードルもあります。そこで、税理士など事業計画の作成やノウハウを持った頼れるプロの力を借りてはいかがでしょうか?
もちろん丸投げはいけませんが、自分の熱意と思い描く未来像を具現化して事業計画に落とし込んでくれる、そんな頼れるプロなら、創業融資で1,000万円借りることの実現も見えてくるのではないでしょうか?
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。